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実践経営倫理塾 働く人、組織、社会を元気にする経営倫理実践とは

経営倫理実践研究センター主任研究員
村松邦子


第2回 なぜエシカル・リーダーシップなのか


前回は、企業倫理の取り組みに、社員一人ひとりの自律性と「エシカル・リーダーシップ(倫理的リーダーシップ)」を活かすことを提案しました。今回は、この概念を整理するために、米国での先行研究を簡単に紹介したいと思います。

 エシカル・リーダーシップは、これまでのリーダーシップ研究の中で、リーダーの「倫理的な特徴」と「影響力」に関心が向けられ理論化されたもので、経営学、社会学、心理学等の分野にまたがり研究が進められています。

ブラウンとトレヴィーノ(2005)は、エシカル・リーダーシップを「個人的な行為や対人関係を通してリーダーが規範上適切なふるまいを示すこと、また二者間のコミュニケーション、強化および意思決定を通じて、フォロワー(部下)にそのようなふるまいを促進すること」と定義しています。

レシックら(2006)によると、エシカル・リーダーシップの普遍的側面とは下記の4つであり、他人の権利や尊厳の尊重を含んでいます。

? 誠実(Integrity)
? 利他主義(Altruism)
? 集団・共同体的動機づけ(Collective Motivation)
? 励まし合い(Encouragement)

  また、これらを特徴づける鍵として、以下の6つを挙げています。

? 品性と誠実さ(character and integrity)
? 倫理意識(ethical awareness)
? コミュニティ・人間指向(community/people-orientation)
? 動機づけ(motivating)
? 励ましとエンパワーメント(encouraging and empowering)
? 倫理的説明責任(managing ethical accountability)

 エシカル・リーダーシップが注目されてきた背景の一つに、「役割や地位としてのリーダーが持っている大きな影響力」や「社会的パワーをどのようにコントロールするか」ということがあります。エシカル・リーダーシップの考え方を社内に導入することでハラスメント防止や効果的なチーム運営に成果を挙げています。また、対話を重視することで、部下の動機づけや支援につながっており、人材育成という観点でも有効とされています。

 米国では、1990年代半ばから自律型社員の育成と価値共有型の企業倫理推進が志向されてきました。数多くの先進企業が教育研修の指標としている「倫理的な発達段階」においても、ピラミッドの一番上は「倫理的なリーダーシップをとる」ことであり、従業員と組織を、各段階をこなしては上の段階に押し上げていくことが提唱されています(図1参照)。

図1 倫理的な発達段階

次回は、日本の現状を踏まえた上で、この「エシカル・リーダーシップ」をどのように考え、企業倫理実践に取り入れて行けばよいかお話したいと思います。

<参考文献>

Resick, C.J., Hanges, P.J., Dickson, M.W., Mitchelson, J.K. (2006): A Cross-Cultural Examination of the Endorsement of Ethical Leadership. Journal of Business Ethics 63 345-359

ドーンーマリー・ドリスコル、W・マイケル・ホフマン共著 菱山隆二、小山博之 共訳『ビジネス倫理10のステップ』(2001 生産性出版)

Brown, M. E., Trevino, L.K.& Harrison, D.A.(2005) Ethical leadership: A social learning perspective for construct development and testing. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 97 117-134

Reilly, E.C.(2006) : The Future Entering: Reflections on and Challenges to Ethical Leadership. Educational Leadership and Administration volume18, Fall 2006 163-169

Trevino L.K., Brown, M., & Hartman, L.P.(2003) A qualitative investigation of perceived executive ethical leadership: Perceptions from inside and outside the executive suite. Human Relations 56(1) 5-37

Yukl, G.A.(2002) Leadership in organizations(5th ed.) Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall.

村松邦子主任研究員 プロフィール


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