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実践経営倫理塾 「経営倫理と内部監査」


実践経営倫理塾 「経営倫理と内部監査」

BERC上席研究員 貫井陵雄

第5回 内部監査の品質向上と今後の展望

 本講も今回で最終回を迎えました。
 これまでの議論を振り返り、再度、内部監査の意義について復習したいと思います。
そこで、日本内部監査協会の『内部監査基準(2004年改定)』の中での「内部監査の意義」の項には、大変重要なことが書かれています。これを引用しながら、日頃多くの内部監査部門の方々が大変苦慮している、「内部監査品質の向上」という重大なテーマを考えてみたいと思います。

 そこに記された「意義」の冒頭には、「内部監査」とは、「組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、合法性と合理性の観点から公正かつ独自の立場で、経営諸活動の遂行状況を検討・評価し、これに基づいて意見を述べ、助言・勧告を行う監査業務、および特定の経営諸活動の支援をおこなう診断業務である」と書かれています。その内容については、あらためての解説は不要と思われます。
ただし、上記の条文の前半部や中段部については、これまでしばしば述べてきたことでありますが、問題は後半部の『診断業務』という記述です。ウイキペデイアによると「診断」とは、「異常の有無を判断し、異常があればその種類を同定し、何らかの介入が必要かどうかを判断する作業である」としています。この「診断業務」という表現は、企業のミッション(企業理念)や効率的で有効な事業活動、そしてその成果の確認や検証を行う内部監査部門にとって相応しい業務内容を表現しているものと思われます。

 また、『内部監査基準』では、企業目的の効果的な達成の促進ほか、ビジネスリスクに対応した内部統制システムの促進や組織全体としての円滑な常務改善の推進などを掲げて、内部監査業務の実践を促しています。

 これらの証として、内部監査が独りよがりの監査になっていないか、本当に企業経営に役立っているのか、組織の業務改善をはじめとして各部門のよき相談相手として認知されてきているか、などなど監査のPDCAを回すと同時に、数年に一度、外部の専門家に委託して意見やコメントを聞く仕組みを活用することもお勧めしたい。こうした外部評価を採用することで、信頼性の高い内部監査部門に成長していくことができるのは間違いありません。

 さて前章の冒頭で、金融庁から平成21年7月、平成21年3月決算会社の「内部統制報告書」の概要が公表されたと述べました。

 全体で2,630社からの提出があり、そのうちの97,6%にあたる2,605社は、「内部統制は有効であった」と報告されました。次いで56社(2,1%)の企業では、「重要な欠陥があり、内部統制は有効ではなかった」とされています。56社の中には、売上高が400億円を超える企業もありました。単純な比較はできませんが、米国ではSOX法施行初年度は、「重要な欠陥があり」とされた企業が15%超であったと聞いています。わが国では多大な時間・費用・労力を投入したこともあり、まずまずの成績ではなかったでしょうか。

 そして、残る9社(0,3%)は内部統制の評価結果が表明できないという「無限定適正意見」でありました。

 問題は「重要な欠陥」の中味です。大きく分けて、

1)財務報告に関するリスクの評価や対応をしていなかった、取締役の財務的な不正行為があったなどの「全社的な内部統制の不備」
2) 決算作業の手順書等の未整備、海外子会社による不適切な会計処理などの
「決算・財務報告プロセスの不備」
3) 適切な売り上げ計上に必要な契約内容の未確認、商習慣上契約書がない、システムの「運用・保守管理規定」が運用不十分で、一部のデータが消失したなどの「主要な業務プロセスの不備」

 の3点が指摘されています。

  当社においてもこれに準ずる類の不備がなかったか、そのシステムと運用を再チェックし、内部統制の一層の質の向上を図る必要があると思います。

  それでは企業における一段の企業価値向上に向けて、アフターJ-SOXにおける、内部監査部門の課題とその目標は何でしょうか。

  結論を先取りすれば、それはCOSOのERMフレームワークの構築であります。

  2009年、COSOはCOSO ERM(Enterprise Risk Management)フレームワークを公表しました。これは1992年公表のフレームワークを代替させるものではなく、内部統制システムを有効に機能させるため、企業組織のリスクと機会を全社横断的・継続的に評価・改善していく進化したフレームワークだとしています。
内部監査部門は、今後ますますその意義と実行力が問われます。それには、全社的な包括的な内部統制の確立を経て、海外を包含するグローバルERMの確立が大きな課題となることは間違いありません。

  みなさまがたの、一層のご健闘を祈念して筆を置きます。ご愛読有難うございました。

 ※貫井陵雄先生は、2010年8月28日ご逝去されました。本稿が先生のご遺稿になります。

貫井陵雄 上席研究員のプロフィール


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