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実践経営倫理塾 『何をもってCSRの評価とするか』 ?CSRとSRI?


『何をもってCSRの評価とするか』 ?CSRとSRI?

BERC主任研究員 星野邦夫

はじめに

  まず最初にCSR(Corporate Social Responsibility)とは、「企業の社会的責任」、SRI(Socially Responsible Investment)とは「社会的責任投資」のことである。
 2010年11月1日、関係者待望の「SR規格・ISO26000」が全世界で同時に発行された。作業が始まってからはや5年、準備段階から数えれば延々10年にもおよぶ膨大なプロセスを経て、ようやくゴールインした。何度も挫折しそうになりながら、持続可能な地球と社会を求める世界共通基準が誕生した。関係者の志と忍耐力にまずは敬意を表したい。
 しかし、SR規格は組織の社会的責任について、「その対象とする分野と課題、目指すべき基準」を明らかにしてくれたが、「自組織の社会的責任活動に対する評価」については何も答えてくれるものではない。
 ISO26000は従来のISO××××のように第三者認証を伴うものとしない、ガイダンス規格ということで、妥協に妥協を重ねた末ようやく成立したものだから仕方がない。「何を、どこまで、どのように、いつまでにやるか」は依然として企業の自主性に任されたままだ。
 ある会社のトップがそれを聞いて「やれやれ、うちはもうやらなくていい」言ったという。
 しかし、当欄の読者の大部分の人は、企業倫理やコンプライアンス、リスクマネジメント、CSR推進などに真面目に取り組まれている方々であろう。企業人として自社のCSR活動あるいはCSR経営のレベルが社会的にどのように評価されているのか、あらためて気になるところだと思う。いわんや経営トップがCSRに熱心な会社であれば、「わが社のCSRはどの辺のレベルなのか」と聞いてくることもあるであろう。

 それに対し、私は「権威ある社会的責任投資(SRI:Socially responsible investment)のインデックス(銘柄群)に採用されることこそ、CSRのもっとも有効な社会的評価である」と考えている。
 CSR関係部署のスタッフは、自社がCSR経営の会社であると言うならば、権威あるSRIインデックス(社会的責任投資指数)に採用されることを一つの目標として諸活動を推進することを提案したい。
 もちろんSRIインデックスではなくてCSR評価として権威のある評価は他にもいろいろある。出版社系では、ニューズウィークの「Newsweek Global 500」、日本の東洋経済新報社「CSR企業ランキング」など、詳細な調査に基づいた評価で存在感がある。ただあえて言うなら評価のしっ放し、名誉はあるがそれ以上の発展性が無いように思う。それに対し権威あるSRIインデックスに採用されることは、具体的に自社の財務基盤を強化することにつながり、同時に投資によって社会に対する良い影響力を一段と発揮できるので戦略的に優れているのではないかと思う。SRIの意義と効果については後ほど述べる。
 本稿の目的は、まずSRIとはどのようなものなのか、さらに権威あるSRIインデックスに採用させるにはどうしたらいいのかについて論じていきたい。具体的には以下の順で話を進める。

1.SRI(社会的責任投資)とは何か
2.CSR(企業の社会的責任)とSRI(社会的責任投資)の関係
3.SRIの運用状況(世界と日本)
4.SRIインデックス組入れ銘柄選定のプロセス
5.世界的に権威のあるSRIインデックス
6.権威あるSRIインデックスに採用されている日本企業
7.SRIアンケートの答え方の実務
8.SRIアナリストの本音

1. SRI(社会的責任投資)とは何か

 SRI(社会的責任投資・Socially responsible investment)とは、「企業に対し、社会的な責任を果たすよう要求する投資行動全般」を言い、企業と投資家にとって社会的に健全な資金の流れを誘導することで、持続可能な社会の構築に貢献することを目的としている。
 わが国でSRIの推進にかかわるリーダーの組織である「NPO法人社会的責任投資フォーラム(SIF-JAPAN)」のホームページでは、SRIを以下のように定義している。
「SRIとは社会的責任投資(Socially Responsible Investment)を示し、一般的には、企業への株式投資の際に、財務的分析に加えて、企業の環境対応や社会的活動などの評価、つまり企業の社会的責任の評価を加味して投資先企業を決定し、かつ責任ある株主として行動する投資手法」。
 歴史を振り返れば、欧米では20世紀の初頭から現在までキリスト教やイスラム教などの宗教団体が投資を行う際に、教団の教義にそぐわないと考えられる企業や業種を投資先から排除する動きが続いてきた。宗教団体は伝統的に軍需産業、たばこ産業、酒類製造業、アダルト産業などを投資先から外す。投資先を排除するという意味でこれらの評価手法を「ネガティブスクリーニング」と言う。
 それに対し1990年代の後半から欧米で起こってきた企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)の社会運動は投資の世界にも大きく影響することとなり、投資において「経済的リターンのみならず、社会的リターンもあげる」とする社会的責任投資(SRI)の流れがにわかに台頭してきた。現代のSRIはCSRの優れた会社に積極的に投資する。良い会社、良い行動を積極的に評価するという意味で「ポジティブスクリーニング」と言う。

2.CSR(企業の社会的責任)とSRI(社会的責任投資)の関係

 CSR経営とは、産業革命以降の企業経営が、もっぱら自社の経済的利益の増大を目指してきた結果、環境破壊や人権問題、失業問題、資源枯渇、企業不祥事の多発等に至ったとの反省から、「企業経営の全プロセスの中に環境的配慮、並びに社会的配慮を取り入れなくてはもはや経営は立ち行かない」とする「経営モデル」の転換としてとらえることができる。
 SRIとは、投資先を選定する際、企業の経済的項目のみならず、環境的項目、社会的項目についても企業をスクリーニング(評価)してCSR評価の高い企業に投資しようとする新しい「投資モデル」である。
 ちなみに、CSRと社会貢献との違いについて一言、触れておきたい。1980年代後半のバブルと言われたころ、企業による「社会貢献」「フィランソロピー」「メセナ」という言葉がもてはやされた。社会貢献とは「利益の分配モデル」の一つであり、「経営モデル」ではなかった。そのため企業の利益、即ち分配の原資が減ると社会貢献活動は概ね停滞を余儀なくされた。
 2008年のリーマンショックを経験して多くの企業が財務的に苦境を強いられてきたが、CSR先進企業のほとんどは、部分的な予算の見直しなどはあるにしてもCSR活動は基本的に変わらないと言っている。それはCSR経営が経営のスタンダードになってきたとの自信の現れでもある。

≪一般的投資のイメージ≫

≪社会的責任投資のイメージ≫

次回は、『3.SRIの運用状況(世界と日本)』、『4.SRIインデックス組入れ銘柄選定のプロセス』を掲載致します。お楽しみに!


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