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実践経営倫理塾 『何をもってCSRの評価とするか』 ?CSRとSRI?


『何をもってCSRの評価とするか』 ?CSRとSRI?

BERC主任研究員 星野邦夫

3.SRIの運用状況(世界と日本)

 それではSRIの運用規模を見てみよう。SIF-JAPAN(社会的責任投資フォーラム)の2007年の調査によれば米国の市場規模は2兆7,110億ドル、現在(2010年12月下旬)の為替1ドル84円で換算すると227兆円でトップ。ちなみにこの金額は米国全体の株式や投資信託等全運用規模の11%とのことでかなりの存在感を持つまでになっている。2位のイギリスは9,582億ユーロ、現在の為替1ユーロ111円で換算すると106兆円となる。以下、オランダの36兆円、スウェーデンの32兆円、ベルギー31兆円、ノルウェー23兆円と続き、EU諸国の市場規模はここ数年急速に拡大している。
ところでわが日本はなんと7千億円という微々たる規模にすぎない。日本よりGDP(国内総生産)ではるかに小さいヨーロッパ各国が日本の何十倍のSRI運用をしている。どうしてこんなことになっているのか。

≪世界のSRI市場規模≫

出典:SIF-JAPAN発表値を現在の為替に換算

 その最大の理由は近年欧米各国が行った年金法ならびに年金に関係する法律の改正である。米国では多くの機関投資家が「SRIは財務指標以外の指標を投資判断に持ち込むので正しい投資判断を惑わすものである」として反対してきた。しかし1998年に合衆国労働省が、従業員退職所得保障法(ERISA法)に定められた受託者基準に関して「財務的な要因が損なわれていない限り、社会的責任投資(SRI)を排除する理由は無い」という見解を表明した。これが契機となって米国では機関投資家の社会的責任投資(SRI)に弾みがついたとされる。ちなみに欧米でも日本でもSRIの投資パフォーマンスは中長期的にみて市場平均のパフォーマンスを常に上回ってきたことは広く知られている。
 また、英国では、2000年の年金法改正によって、年金運用受託者は投資運用において、環境ならびに社会性に配慮しているかの情報を開示しなくてはならないことになった。  
オランダは大部分の年金基金が、リスクマネジメントや倫理的観点から投資先に制約条件を付けるようになった(ネガティブスクリーニング)。年金基金のような巨額な投資資金が、SRIにどっと入ってきたことによってヨーロッパのSRI市場は目覚ましい活況を呈している。
 行政が莫大な年金基金を社会的に優良な企業に投資するよう誘導する。その結果、SRI投資家、社会的に優良な企業、年金積立者・受給者、一般社会(国民)のそれぞれが、WIN-WINの関係でより良き社会の形成に寄与する。まさに国家戦略として成功裏に展開している。
 それに引き替えわが日本は 年金運用分野でも長期的な国家戦略の欠如が国内での社会的責任投資の停滞を引き起こしているのである。

4.SRIインデックス組入れ銘柄選定のプロセス

 ・SRIインデックスを提供する会社は、SRIインデックスを組むにあたっては、そのSRIインデックスの運営理念に基づき、専門の調査会社またはNPO・NGOなどの調査機関に企業調査を依頼する。
・調査会社または調査機関は対象企業の社会的責任活動が適切に行われているかを正しく評価するためのアンケート票を作成する。
・質問項目は、少ないところで40?50問、多いところで100問程度になり、経済性指標、環境性指標、社会性指標の3分野を網羅する。内容的には先ごろ発行されたISO26000の7つの中核主題とほとんど重なっている。ただしSRIインデックスの質問内容は3分野を網羅しているが個々のインデックス運営体によって、そのウェート配分は異なる。
ガバナンスにウェートがかかっているもの、研究開発の有効性・効率性にウェートがかかっているもの、人権に、環境にとさまざまである。
ここで注意したいのは経済性指標である。通常の投資で経済性指標と言えば、ROI(投資資本利益率)、ROE(株主資本利益率)、ROA(総資産利益率)など財務的指標を指すが、SRIの場合の経済的指標は、一寸違う。その会社が適切に利益をうみ出し、ステークホルダーの信頼をもとに持続的に発展してゆくための仕組みや実績を問うものである。
具体的には、コーポレートガバナンス(企業統治体制)の適否、リスクマネジメントの仕組みと実績、行動規範やコンプライアンス条項の内容、顧客対応の仕組みと実績、研究開発の有効性・効率性、会社の起こした不祥事(事件や事故)とそれへの対応などである。
参考までに、日本では老舗格で最も権威のあるSRIインデックスと言われるMS-SRI(モーニングスター・サステナビリティー・インデックス)の作成プロセスを示す。

≪作成の理念≫
社会を構成する市民として社会創造の役割を担う。
既存のSRIインデックスの選定基準は、主に倫理や社会的責任の面から策定された基準であるが、MS-SRIでは、企業の能動的な姿勢、つまり「創造」的な基準を重視する。

≪評価基準(クライテリア)≫
・ガバナンス/アカウンタビリティ
・マーケット(消費/顧客対応、調達先対応)
・雇用
・社会貢献
・環境

≪スクリーニング方法(評価方法)≫
・NPO法人パブリックリソースセンターがインデックスの評価基準に沿ったアンケートを作成して、上場公開企業約3,600社へ調査 を実施。
・調査結果に基づき300社に絞り込む。
・組入対象候補企業群の構築(当初200社目標)。
・定量的スクリーニング(SRI評点等)を加えて、最終的にSRIインデックス組入れ銘柄を決定(150社)する。
・毎年、定期、不定期に銘柄を入れ替え、新たに選定した銘柄150社を投資家に周知する。

≪MS-SRI選定のイメージ≫

(出典:MS-SRIのホームページ: http://www.morningstar.co.jp/sri/index.htm )

次回は、『5.世界的に権威のあるSRIインデックス』、『6.権威あるSRIインデックスに採用されている日本企業』を掲載致します。お楽しみに!


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