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実践経営倫理塾 「経営倫理と内部監査」


実践経営倫理塾 「経営倫理と内部監査」

BERC上席研究員 貫井陵雄

第1回 企業不祥事はなぜ起きるのか

 新聞をひもとくと、毎日のように企業不祥事が報道されています。テレビでは、決まり文句のように幹部が深々と頭を下げた姿が映し出され、「コンプライアンスが不十分で、世間に大変ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした」とこれ弁解に努めています。

 しかし彼らからは、企業不祥事は天下の大罪であり、それは企業の生死に関わる重大問題だという意識がほとんど伝わってきません。どうしようもない光景です。なぜでしょうか。

 本講では、企業不祥事を分類したり、その原因を考えていくのですが、その前に、今世紀(ポスト産業資本主義の時代:東大、岩井克人教授)にはいって、経営価値観や経営思想が大きく変化していることを思い起こして欲しいのです。

 すなわち、これまで企業の目標は、利益至上主義や経済覇権主義などの考え方が主流でしたが、今では、自社の事業の持続的成長というコンセプトに大きく転換しつつあるということです。ではポスト産業資本主義時代における、企業の競争優位な持続的成長に欠かせぬ要因とはなんでしょうか。

 その第1は、事業遂行のための企業理念である企業価値観(企業倫理観)を確立し、かつ組織構成員がそれを共有することです。とりわけ、これから起こるであろう企業合併などでは、この企業価値観(企業文化)の相互理解の度合いが極めて重要になると思います。

 第2は、コーポレートガバナンスという仕組み(経営の自己規律の確立)の構築です。これによって、内部統制の適正性や不正行為の防止が担保され、健全な経営が約束されるのです。

 第3は、企業倫理を基盤にした社会的責任の実践です。この戦略は、企業活動を通じて、「社会とのつながり」を活かしたものでなくてはなりません。自社の企業活動との繋がりの薄い社会的責任・貢献活動は、社会からなかなか受け入れてもらえません。

 さて、2011年に示される予定の「社会的責任」に係る国際規格ISO26000は、マネジメント規格ではなく、ガイダンス規格であることに留意してください。

 近代企業経営は、上記の成長持続戦略を思考しつつも、不幸にして不正などの企業不祥事やリスク対応が十分でない事象が起きてしまうことがあります。

 企業不祥事とは、前にも述べたように、天から降ってくる不吉な出来事ではなく、もはやれっきとした企業犯罪です。これを発生類型別にしかも簡潔に表現してみてみますと、1は、粉飾決算などに見られる「ごまかし」であり、2つは、談合に代表されるカルテル行為や贈収賄などの「不当な競争」であり、3つは、環境破壊、食品偽装、PL違反など「人権・安全の欠如」の3つであります。もしくは、その複合された事態です。これらの企業不祥事は、単に社会を騒がせたという単純な話だけではなく、先に挙げた企業の持続的成長戦略を自ら破滅させる自殺行為(社会からの退場)であることは論をまちません。

 それでは、これらの企業不祥事を未然に防止し、健全な企業活動をおこなうのが経営者自身であることは間違いありませんが、そのトップを支え、不祥事の未然防止を担う監査役、公認会計士そして内部監査人の役割と責任も決して小さくはありません。
(ただし、これらの諸監査が必ずしも万全ではないことは、後述いたします=内部統制の不備。)

 上記の分類は筆者が試みたものですが、他方、トーマツ企業リスク研究所では、企業不祥事を下記のような要因別に分析しているので紹介します。

1) 企業トップが自らその規律を破るコーポレートガバナンスにおける問題。
 これは一番厄介な問題であり、COSOの「統制環境」の乱れにあたります。
2) 社内ルールの無視、目標達成威圧に起因する違法行為、監査の軽視など内部環境に関わる問題。
3) リスクマネジメントの欠如からくる、リスクの評価・対応の問題。
以下、不正を許す企業風土、甘いモニタリングによる企業全体の緩みの問題も無視できないと解析しています。

 以上の検討から、企業不祥事を防止し、健全で成長を約束する企業を築くため、トップの不法・不正行為の監視のみならず、効率的・効果的な社内業務遂行を監査する活動がいかに重要であるかが、いま認識されてきています。


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