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実践経営倫理塾 『東日本大震災からの教訓:新しい事業継続計画(BCP)とは?』

『従来のBCPがあまり役に立たなかった理由』

上席研究員 吉田 邦雄

 
2011年3月11日14時46分日本の三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が起こり、これに伴う10mを超える大津波、その直後に発生した福島第一原発事故は、日本歴史上想像を絶する大災害となった。
ご承知の通り、原発事故による放射能汚染等の危機は収束せず現在も進行中である。 安心・安全という日本ブランドの失墜、製造業の生産停滞、電力不足による産業インフラへの打撃、風評被害等我が国多くの企業は、従来の事業継続計画(BCP)ではあまり役に立たなかったとの反省をもとに大幅な見直しに入っている。

目 次
   第I章.大手企業事業継続計画(BCP)の特徴
       重要業務の継続、本部IT機能消失対応、失敗からの教訓
   第II章.これからの事業継続計画(BCP)の基本的方向性
       東日本大震災からの教訓、“想定外”に強い事業継続計画(BCP)
   第III章.新しい事業継続計画(BCP)策定上の留意点
       内閣府「事業継続ガイドライン」を参考とした新BCP策定上の留意点

今回は、我が国大手企業・諸団体の事業継続計画(BCP)導入の実態からその特徴をご紹介したい。次に、
東日本大震災からの教訓は何か、いわゆる想定外のリスクに対して企業がどのように備えていくかを言及する。終わりに、内閣府「事業継続ガイドライン」をベースに、従来型のBCP領域ではなく、いわゆる“想定外”の緊急事態発生時のBCP領域に関しその策定上の留意点を考察するものである。
これからの倫理・コンプライアンス・CSR部門等は、“企業の社会的責任遂行”の見地から、「企業にとり真に役立つBCPとはどのようなものか?」をあらためて考える必要が出てきている。


第I章.大手企業事業継続計画(BCP)の特徴(注1)

I.BCP策定では重要業務を特定し止めない策を講ずる

 先ず、BCP策定上の基本的な考え方として、最重要な業務は何かを特定することから始める。
しかし、多種多様な事業を行っている企業・団体は、その重要度の見極め方が極めて難しい。IT面での対策も大規模になるケースが少なく、このため各企業・団体は次のようないろいろな工夫を取り入れている。

企業・団体
BCPの特徴
P社(家電) プロセスを含めたBCPガイドライン策定により、全世界従業員33万人のBCP策定。
S社(精密機器) IT部門リードのもとインフラ(サーバー)集約により、リスクの可視化とコスト削減
S社(医薬品卸) 基幹系から有事に備え物流システムを切り出し二重化。取引先との連携化
S社(洋酒) IT部門が費用対効果を提示し、事業部門が重要業務か否か判断
N社(金融機関) 取引先におけるBCPの復旧目標や実地訓練への厳しい監査
メガバンク等 BCPの“お手本”公開。自行だけでは非常時対応限界。大規模訓練にて課題浮き彫り
中央省庁 内閣府、経済産業省、中小企業庁等がBCPガイドライン策定
F社(IT) 事業特性の異なるグループ単位でBCP策定。活動成果の可視化と更新作業の効率化
大手 IT業界 自社の事業継続の実現のために取引先のBCP策定・実行の要請、取引の見直し
H社(電機) BCPガイドライン策定により、全世界従業員20万人のBCP策定。取引先への要請

II.本部IT機能が消失しても代替オフィス確保

情報システムのバックアップだけでは重要業務は止まってしまう。有事の際でも必ず使える代替オフィスを確保する対策を講ずる。また、併せて、画期的なシステムコストの削減も図っている。

企業・団体
BCPの特徴
N社(証券) 本社ディーリングルームが破壊されても、IT環境整備済みの代替オフィス確保
B社(外資製薬) 基幹システムが消失しても2日以内に再稼動できるバックアップ機を他企業と共有化
O取引所(証券) 業界内で緊急時のシステム融通。東京で大災害発生しても大阪でバックアップできる体制
D社(証券) 端末にデータを持たせないサーバーのデーターセンター化・新システムの全面導入
S社(コンビニ) 東西2箇所における主要サーバーのバックアップ化。1万店舗の業務継続を支える
P社(家電) 大阪本社/近畿地区2センター体制。後者は原則無人運用。仮想化技術で大幅コスト削減
F社(事務機) データセンターの免震構造化、WAN回線の二重化。重要業務を1日で復旧
A社(ビール) データセンターの免震構造化、サーバーの冗長化、社員ノートPCで基幹システム代替化
K社(菓子) 沖縄のバックアップ体制強化の一環で東京との間で無償の高速回線活用

III.定期的な訓練と失敗からの教訓を生かす

BCPは構築したら終了ではなく、常に定期的な見直しが必要である。これまでの失敗からの経験や実地
訓練を通じて、経営トップ自ら陣頭指揮に当たり“想定外”有事に備えなければならない。

企業・団体
BCPの特徴
Y社(計測器) BCPの有効性確認のため、通知済みのシナリオにない“想定外”の事態を発生させて訓練
T社(火災保険) 2メインセンター間で、最重要システムの1週間毎の定期的システム切り替え実施
K社(製鉄) 2センター間でIT防災訓練を通じ対応力確認。アプリの整合性、携帯依存などで課題発見
M社(乳業) 年3回の訓練で実効性の高いBCPを目指すと共に課題抽出。災害対策を全社展開

(注1) 2009年4月日経コンピュータ編集『事業継続実践ガイドブック』日経BP社を参考に作成

次ページに続く


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