トップ  >  実践経営倫理塾 不祥事防止のツボ 第1回 不祥事の原因は利益優先?倫理意識の欠如!?
実践経営倫理塾 不祥事防止のツボ

経営倫理実践研究センター上席研究員
関東学院大学経済学部教授
小山 嚴也

第1回 不祥事の原因は利益優先?倫理意識の欠如!?

 「企業不祥事が頻発している」,このようなフレーズを目にすることが多い.確かに,この言葉には説得力がある.実際,過去10年に限定しても,社会の注目を集めるような企業不祥事が「多発」しているからである(図表1).

 こうした企業不祥事の「頻発」をうけ,社会は企業の利益優先主義を強く批判する.安全性や法令,倫理よりも利益を優先しているから不祥事が発生するというのである.他方で,とりわけ2000年以降,各企業は不祥事の防止に積極的に取り組んできている.企業も不祥事に対してただ手を拱いているわけではない.BERCでの会員企業の熱心な取り組みはその証左であろう.

 企業が不祥事防止に向けた努力をしていないのであれば,社会からの批判を甘受せざるを得ない.しかしながら,多くの企業は非常に熱心にCSRマネジメントを実践している.このように企業が不祥事防止に向けた努力をしているにもかかわらず,企業不祥事が頻発しているとすれば,その根本的な原因はどこにあるのだろうか.

 そもそも不祥事の原因を,「利益優先?倫理意識の欠如」と単純に捉えていいものなのだろうか.利益優先が原因ならば,役所や学校などの非営利組織では不祥事は起こらないはずである.さらに言えば、日本の企業人は本当に利益優先という意識を持っているのかという疑問も生じる.実際,日本企業はマーケットシェアの拡大を目指すことが多いし,会社の規模をいうときも,しばしば売上高がその目安として使われる.本当に利益を優先しているのならば,そうしたことはおきないだろう.

  「企業不祥事」という言葉がさし示す内容は多岐にわたるとともに曖昧である.企業が引き起こした事故もあれば事件もあるし,それが故意の場合もあれば過失の場合もある.会社ぐるみのものもあれば,特定の部門で生じたものもある.図表1で示した企業不祥事も,ひとくくりに扱われることが多いが,実際には異なる性質のものである.

 そう考えると,優先されるモノがなんであれ,全ての企業不祥事の原因を倫理意識の欠如のみに還元することには,いささか無理があることがわかる.根本的には倫理意識という姿勢の問題なのかもしれないが,しかし,多くの不祥事の背景には,姿勢を正すだけでは解決できない何かが存在する.企業不祥事を防止したいならば,むしろ,企業組織のもつ何らかの特性,あるいは人間の持つ何らかの行動特性が複雑に絡み合って不祥事が引き起こされているという前提で議論を進めるべきであろう.原因を過度に単純化してしまうことは,問題の本質を見失うことに繋がるのである.


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