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CSR報告書分析室 : 星野邦夫主任研究員

「よいCSR報告書」とは

筆者はもと、企業のCSR報告書の編集長を4年にわたり務めた経験がある。その時、「よいCSR報告書」とはいったいどのようなものか、あれこれ考えた。

CSR報告書がいかに立派でも、CSR活動の実態に乏しければ自画自賛の誇大宣伝物になってしまう。また、CSR活動の実態が立派であっても、報告書の記録が適切でなく表現力に乏しいと「よいCSR報告書」とは認められない。つまり、「よいCSR報告書」とは、前提としてレベルの高いCSR活動の実態があり、それをわかりやすく信頼性の高い報告書として表現しているとき、初めてそう言えるのではないか。

CSR報告書をいざ作るとすると、具体的には世界基準であるGRIガイドライン:http://www.globalreporting.org/Homeにそって作ればよいことになっている。日本では、サステナビリティ日本フォーラム:http://www.sustainability-fj.org/intro/index.php から信頼性の高い和訳が出ているので通常これを利用する。

ところで、GRIガイドラインの対象領域はほぼ経営全般にわたるので、それらを網羅的に書こうとすると際限のない膨大なものとなり、結果誰がこんなものを読むのかと言うことにもなりかねない。どこにウェートを置きどこを軽く扱うか、または省略するか。またどうしたら読者にとって魅力のある報告書になるのかは企業の自主性とセンスに任されたままだ。

そこで筆者は、過去に世間で評価された「よいCSR報告書」とはどのようなものであるかを調べることにした。日本では環境報告書とCSR報告書についてそれぞれの専門家が審査して表彰する制度がある。その中でも環境省および(財)地球人間・環境フォーラムが主催する「環境コミュニケーション大賞」:http://www.env.go.jp/policy/j-hiroba/report.html と、東洋経済新報社およびグリーンリポーティングフォーラムが主催する「環境報告書賞・サステナビリティ報告書賞」:http://www.toyokeizai.net/corp/award/kankyo/ がこの制度の双璧として存在する。

筆者は2007年から2009年までの3年間で「環境コミュニケーション大賞」または「環境報告書賞・サステナビリティ報告書賞」を受賞(ただし、大賞あるいは最優秀賞だけでなく優秀賞も含む)したCSR報告書、20数冊を取り寄せて内容を吟味するとともに、環境省および(財)地球人間・環境フォーラムと東洋経済新報社およびグリーンリポーティングフォーラムの審査員がそれぞれの受賞報告書のどこを評価したかを丹念に調べてみた。

これらは表彰時の受賞理由として各表彰団体のホームページに公表されているので容易に知ることができる。ちなみに、それぞれの審査員は企業のCSRに携わってきた者ならば誰もが知っているであろう、著名なCSRの専門家達である。

筆者は審査員の評価コメントについて、先ずキーワード化とカテゴリー化を行い、いくつかのパターンに分類できないものか、再構成してみた。それらを精査した結果、「評価されるCSR報告書」の評価ポイントは、概ね以下の11項目のどれかに収まっていることが分かった。もちろんこの11項目以外の評価コメントもあるが、評価コメントとして共通性の高いもの上位11項目(ただし多い順に並べたわけではない)に絞り込んだその結果である。

1.経営トップがCSRに積極的に取組み、コミットしているか

2.事業活動とCSR活動が整合性をもっているか

3.環境と社会分野において、自主的で意欲的な目標を掲げているか

4.目標達成のための戦略やプロセスを明らかにしているか

5.過去の実績や活動を、正しく、わかりやすく開示しているか

6.取組は、その分野において先進的な成果をあげているか

7.活動の網羅性とともに、独自のユニークな取組をしているか

8.ステークホルダーとの協働に積極的に取組んでいるか

9.CSRの新しい課題に取組んでいるか

10.プラス情報だけでなく、マイナス情報も適切に開示しているか

11.記載された情報の透明性・信頼性を高める取組があるか

以上の手法とプロセスの詳細は20107月の「日本経営倫理学会CSR研究部会」で小職が発表したものであるがここでは省略する。ちなみに発表当日は目立った支持もまた反対もないままに終わった。理由はこのように評価者のコメントを整理・解析することで「よいCSR報告書とはどのようなものか」を研究した人がその場にいなかったからだと思われる。

2011/9/2

 味の素株式会社

2011/11/21

 富士ゼロックス株式会社

2012/4/25

 旭硝子グループ

2012/10/15

 大阪ガスグループ



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