このたび一般社団法人経営倫理実践研究センターの理事長に就任いたしました。
経営倫理実践研究センター(BERC : Business Ethics Research Center)は、日本にコンプライアンスという概念が導入され1991年に経団連企業行動憲章が制定される中、経営倫理を実践する我が国初の産学協同の専門機関として1997年に設立され、当初は20社にも満たない会員企業でしたが、2009年には一般社団法人となり、現在は170社を超えるほどになりました。
BERCは発足以来、四半世紀を超えて経営倫理の旗印の下で、日本経営倫理学会などとの連携のもと、コンプライアンス、リスクマネジメント、コーポレート・ガバナンス、CSR、監査、最近ではESG、サステナビリティ経営に関する情報収集や研究、会員間の情報共有、会員の事業活動に対するコンサルティングなどをおこなってまいりました。
特にBERCの中心的活動である研究会は、創設以来変わらず、アドバイザーの先生方からのサポートはあるものの、単なる座学ではなく、会員同士の意見交換を通じて経営倫理のあり方について意識を高めていくところに大きな特徴があります。そのような意見交換を通じて得られた気づきを持ち帰り、会員自身の経営倫理実践に役立てることはもちろん、研究会で得られた会員同士のネットワークは、他にはないBERCならではの貴重な財産というのが会員共通の声となっています。
一方世界に目を向けると、私たちを取り巻く環境は、国家間の分断や紛争、関税問題・貿易摩擦、サイバー攻撃、AIの活用と規制、さらには人権に関する諸問題などが、宗教、民族、国家体制なども絡めて、多様化、複雑化しており、企業活動に大きな影響を及ぼす事象は枚挙に暇がありません。
しかし、このような難しい環境下であっても、事業活動を通して企業価値を向上させるためには、むやみにビジネスリスクを避けるのではなく、適切にリスクを取って、それを管理していくことが重要となります。一方で、企業価値の毀損に繫がるコンプライアンス違反は当然避けなければならず、特に企業不祥事でよく言われるような「会社の常識は、社会の非常識」とならないよう、世の中の動きには常に目を配り敏感でなければなりません。
2024年度のBERCの研究会への登録者数と参加者数は、過去最高となりました。このような難しい時代だからこそ、会員同士が相互に触発し合いその英知を結集することが、会員それぞれの企業価値向上に繫がると考えていただいたからこその結果だと考えます。
BERCでは「経営倫理を実践されるみなさんが、志、想い、悩みを共有できるさまざまな機会があります」と謳っています。引き続きBERCという場に集っていただけるよう、会員のみなさんにとって企業価値の向上に結び付く経営倫理の実践に真に役立つ活動にこれからも取り組んでまいります。それが我が国産業界に経営倫理をさらに普及させる一助になり、そしてBERCの趣旨に賛同いただける輪が大きく広がることを願っています。(2025年6月)