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2010-02-25 |  アドバイザーコラム

第4回 国際規格ISO26000の特徴

 現在、ISOでは、社会的責任規格として国際規格ISO26000の策定作業を進めており、本年9月ごろには発行する見通しである。このような国際的な動きは、ISOにおける国際規格やマネジメント・システムが、第1世代の品質規格(ISO9000シリーズ)、第2世代の環境規格(ISO14000シリーズ)から、第三世代の社会的責任規格(ISO26000)へと流れている。
(1)注目すべき特徴
これまでのISO/SR総会における討議を踏まえると、ISO26000には次のような注目すべき特徴がある。
 第1に、この国際規格は、規模や場所を問わずすべてのタイプの組織を対象としている。先進諸国や発展途上国を含む全世界における、企業、大学、病院、NGO/NPO、自治体などあらゆる組織のための規格となる。
 第2に、この規格はマネジメント・システム規格ではなく、"ガイダンスを提供する国際規格"である。マネジメント・システム規格のように、PDCAサイクルにより実践することを要求せず、それぞれの組織の成果を期待する。
 第3に、ISO9000やISO14000とは異なり、適合性評価や第三者認証に使用されることを目的としていない。したがって、第三者認証を取得するための費用は必要ない。規格には、一貫して"shall "(?すべき)より、 "should"(?するのがよい)を使用する。
(2)SRの定義(CSRから、"C"をとり、SR)
国際規格原案1では、「社会的責任」(SR)について、次のとおりの定義されている。

「社会的責任」の定義
組織の決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して、次のような透明かつ倫理的な行動を通じて組織が担う責任:
― 健康及び社会の繁栄を含む持続可能な開発への貢献
― ステークホルダーの期待への配慮
― 関係法令の順守及び国際行動規範の尊重
― 組織全体に取り入れられ、組織の関係の中で実践される行動
参考1 活動は製品、サービス及びプロセスを含む。
参考2 関係とは組織の影響力の範囲内の活動を指す。

1 日本規格協会邦訳(2010)『社会的責任に関する手引き』(国際規格原案)、日本規格協会、 pp.19-66

(3) 7つの中核主題の内容
  ISO26000(国際規格原案)では、次の7つの中核主題を組織統治が共通基盤となるように提示しており、企業や組織にとり極めて重要な主題・課題となる。
1)組織統治(Organizational governance)

・ 組織統治とは、組織がそれによって目的達成のための意思を決定し、実行するシステムのことである。
・ わが国企業事例 :?コンプライアンスの推進で社会の要請に応える、?ガバナンス(組織統治)の推進により企業価値を向上、?ステークホルダーミーティングデで真の意見交換など。
2)人権(Human rights)
・ 人権とは、人であるがゆえにすべての人に与えられた基本的権利である。
・ わが国企業事例:?ハラスメントの撲滅で人権を守る、?女性の活躍促進のための環境整備を、?障害者雇用は企業の社会的責任など。
3)労働慣行(Labour practices)
・ 組織の労働慣行には、組織内で、組織によって又は組織の代理で行われる労働に関連するすべての方針及び慣行が含まれる。
・ わが国企業事例:?ワークライフバランスを充実させる、?安全・衛生的な職場環境で従業員を守る、?立場の弱い派遣社員への対応など。
4)環境(The environment)
・ 組織は、環境原則(環境責任、予防的アプローチ、環境リスクマネジメント、汚染者府負担)を尊重し、促進すべきである。
・ わが国企業事例:?あらゆる場所で温室効果ガスを削減する、?太陽光や風力などでつくる電力の利用促進、?回収した使用済み自社製品の再利用など。
5)公正な事業慣行(Fair operating practices)
・ 公正な事業慣行は、組織が他の組織及び個人と取引を行う際の倫理的行動に関係することがらである。
・ わが国企業事例:?談合・カルテルを撲滅する、?サプライチェーン全体でCSR調達を推進、?不祥事情報の早期開示で消費者の心をつかむなど。
6)消費者課題(Consumer issues)
・ 消費者に対する社会的に責任ある慣行の指針となる原則は、まず「消費者の8つの権利」―?生活に必須なものが満たされる権利、?安全の権利、?知らされる権利、?選択する権利、?意見が聞き入れられる権利、?救済される権利、?消費者教育を受ける権利、?健全な生活環境の権利―が認められている。
・ わが国企業事例:?製品情報の提供で消費者に安心感を、?顧客満足度の高い商品・サービスの提供、?ユニバーサルデザインで人に優しさをなど。
7)コミュニティ参画及び開発(Community involvement and development)
・ 組織が自らの活動する場所であるコミュニティと関係を持つことは、今日広く認められている。こうした関係の土台になるのが、コミュニティ開発への貢献を目的としたコミュニティ参画である。
・ わが国企業事例:?少子化時代に欠かせない次世代育成、?極度の貧困と飢餓の撲滅、?行政府との協力関係の強化など。

 企業事例は、田中・水尾監修『CSRハンドブック』PHP研究所、2009年、第2部参照。

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