皆様が仕事や社会生活の場面で、コンプライアンスという用語を目にし、聞く機会が多いと思われる。 CSR (企業の社会的責任)の本質を考えるためには、まず この コンプライアンスの意味をしっかりと理解することが第一歩である。
「コンプライアンス」( compliance )は、一般的に「服従、応諾、承諾、追従」を意味する言葉である。 医薬の分野では、「服薬順守」などの意味があるとともに、ビジネスの分野では、 「ルール、約束、法律などに従うこと」のほかに、 「関係者の願い・要請などに対応する」という意味があることが重要なポイント である。
コンプライアンスについて、一般的に、関係法令等の法規範を遵守する 「法令遵守」(狭義)と訳され、受け止められているが、これは、"最低限の義務"である。 企業は、経済的存在であるのみならず、社会的存在として社会に与える影響が大きいことから、企業人一人ひとりは、「単に法令を守ればよい」「法令に違反しなければ、何をしても良い」というものではない。自分が所属する会社や組織では、内部の諸規定・マニュアル等の「社内規範の遵守」がある上に、社会人として生活する以上、社会の良識・常識等の「社会規範の遵守」まえ求められている。ここまでが、広義の「法令等遵守」としての理解である。
さらに有力企業では、コンプライアンスについて「理念・ビジョン、計画に適う行動を取る」ということまでを包含する、従来よりも広い意味にとらえ実践している事例が多い。
図表 コンプライアンスの意味 ?狭義から広義への広がり?
したがって、わが国企業やさまざまな組織におけるコンプライアンスの定義は、図表1のように要約できる。
第 1 は、「法令遵守」(?)は、 法律、政令、省令等の遵守であり、狭義の定義である。
第 2 は、 「法令等遵守」 ( ?+?+? ) は、さらに 社内規則、業務マニュアル等の社内規範の遵守と社会の常識・良識等の 社会規範の遵守まで包含する広義の定義である。多くの企業人は、この意味で捉える必要がある。
第 3 は、 「理念・法令等遵守」 ( ?+?+?+? ) は、上記第 2 に加えて、 経営理念、経営哲学、価値観等を踏まえて「理念・ビジョン・計画に適う行動」として、企業行動全般まで広げた最広義の定義である。
社会から望まれる「誠実な企業」として、持続的発展を遂げるためには、コンプライアンスを実践し定着するように倫理的な企業文化や組織風土の醸成が望まれている。 企業人として、関係者の願い・要請などに対応して事業活動をどのように正しく行うかに関する、すべての倫理問題の基盤がコンプライアンスの真の意味と考えられる。コンプライアンスは、まさに「世のため人のため」に行うのである。
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