国際カルテルの動向をテーマに植村 幸也氏が講演
経営倫理実践研究センターでは、毎年春と秋の2回、会員企業の経営倫理担当役員(BEO)の昼食懇話会を実施しているが、2014年11月19日、その20回目が大江橋法律事務所の植村幸也弁護士を講師に招き、東京都港区の国際文化会館で開催された。
講演のテーマは「近時の国際カルテルの動向(米国を中心に)」。
最初に矢野薫理事長(NEC会長)から挨拶。「企業活動のグローバル化がますます加速する中、コンプライアンス、危機管理を十分意識しなくてはならない。昨年秋は外国公務員贈賄をテーマにしたが、今回は同様に重要なテーマである国際カルテルを取り上げたい。」と述べた。
植村氏は米国カルテルの罰金上位の10社を示し、罰金額が一件500億円を超えるほどにもなっていること、この10年くらいで罰金額が急増していること、また、違反を犯した個人についても、実刑率が上がり刑期も長くなっていると説明した。以前、外国人は米国人に比べ執行猶予付判決がくだされることが多かったが、現在は全く差異がないとのことである。
次に最近の米国自動車部品カルテル問題でいかに日本企業の多くが処分されているかという話に移り、米国に直接輸出された部品だけでなく、完成車として輸出された場合でも、米国市場に一定の効果が及ぶ限り米国反トラスト法の適用がある(域外適用)などいくつかの注意すべきポイントを述べた。
また、米国司法省の組織図を示し、反トラスト局はFCPAなどを扱うCRIMINAL DIVISIONとは別の専門組織であること、加えてカルテルの制裁、量刑ガイドラインについても言及した。
さらには捜査の流れについて説明があり、カルテル発覚の端緒は圧倒的にリニエンシー(当局への捜査協力により、罰金減免などの裁量的な免責を受けられる制度)からが多く、サピーナ(大陪審からの召喚状)を受けて初めて事案を知るような企業は、どこかがリニエンシーを使っているとみて素早く対応することの必要性を強調した。その後、サピーナへの対応、リニエンシーの手順、※アムネスティ・プラス制度、司法取引についての留意点に触れた。
※ある違反事実(A)を自主申告したところ、先に申告した企業がいるなどで免責を受けられなくとも、当局に発覚していない別の違反事実(B)を申告できれば、(B)はもちろん(A)についても量刑の軽減を受けられる制度