「不祥事発生時に企業が取るべき行動」八田進二氏が講演
経営倫理実践研究センター(BERC)主催、日本経済団体連合会、日本経営倫理士協会後援の、経営倫理シンポジウム・2020が11月18日(水)に開催された。今年は青山学院大学名誉教授の八田進二先生をお招きし、「不祥事発生時に企業が取るべき行動」というテーマでお話しいただいた。例年国際文化会館を会場に開催してきたが、今回は新型コロナウィルス感染防止の為、BERC会議室からのライブ配信で行い、120名ほどの参加があった。
はじめに、経営倫理実践研究センター上野幹夫理事長(中外製薬株式会社代表取締役副会長)から開会のあいさつがあった。「20年前に東京商工会議所から出された『企業を危機から守るクライシスコミュニケーション』という本にあった『人は起こしたことで非難されるのではなく、起こしたことにどう対応したかによって非難される。』という言葉は現在でも通用すると思う。不祥事が顕在化した際の企業が取るべき行動に関する八田氏の話は大変興味深いものになろう。」
八田氏は講演の冒頭でこの講演の趣旨について語る。あらゆる組織で不正や不祥事が後を絶たないが、そうした場合、決まって導入されるのが第三者委員会による検証と再発防止策等の提言である。しかし丸投げという形で第三者委員会に委ねることで良いのかと疑問を呈し、組織の責任者を中心に、自浄作用を働かせ、適切な不祥事対応を講じることが大切だと断じた。また、「第三者委員会報告書格付け委員会」の委員に加わった経緯などの説明があった。
<最近の企業不正の事案>
八田氏は、資料に掲げた約30件のここ5年間で起こった企業不正の事案を取り上げ、不正は企業であればありとあらゆる業種、また非営利団体や公的機関でも発生していると述べる。また一つの組織でも不正は繰り返し起こることがあり、それを止血するには組織を根底から見直して組織のDNAを変えなければならないと力説する。組織の継続性はどうするのかとの反論には、大企業にはいままで裏で支えてきた多くの優秀な人材がおり、その人たちを登用すべしとのこと。逆に組織のDNAを変えられない企業は不正を繰り返すことになると述べた。役員報酬開示の不正については、非財務情報のディスクロージャーが強く求められている今、粉飾決算と同じと考えられること、金額の多寡ではなく報酬決定プロセスと開示に関しガバナンスが機能しているかどうかという点が注目されるべきという。その他、内部統制にはITの問題や脆弱性を必ず考慮に入れなくてはならない、伏魔殿のような組織は不正の温床である、といったコメントがなされた。また一企業の不正といえども、米国等の海外から日本企業に対する信頼性を失墜させることになると警告した。
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